教護院入所児童の高等学校進学の取扱いについ    

児発第265号の7
平成元年4月10日
   各都道府県知事・指定都市市長 殿                
厚生省児童家庭局長
 
  滋児 第575号
平成元年5月18日
 両児童相談所長・淡海学園長 殿
滋賀県厚生部長
教護院入所児童の高等学校進学の取扱いについて
 
 今般、教護院入所児童の社会的自立を促進するため、平成元年度から教護院入所児童についても、高等学校進学に要する費用(特別育成費)について支弁の対象とされ、併せて年長児童の処遇体制の整備が図られることとなったので、下記の事項に留意の上、適切な実施に努められたい。
 
1 趣旨
 
 教護院は家庭環境等の影響を受け非行傾向を示す児童の教育保護を行い、非行性を除くことを目的としている。
 非行行動は家庭、地域、学校における不適応行動として現れることが多いことから、教護院においては児童本人の性向改善の援助に加え、家庭復帰又は社会的自立を円滑に進めるための処遇の充実が重要である。
 このため、高等学校進学を希望するものの、措置を解除して家庭から高等学校へ通うには未だ不安がある場合、家庭環境の改善調整になお一定の期間を要する場合又は養護施設、里親等への措置変更を行うには困難な状況である場合等に、一定期間、教護院における指導を継続しつつ、児童を高等学校に通わせることにより、その社会的自立に資することを目的として特別育成費を支弁するものとし、併せて年長児童の処遇体制の一層の整備を図るものとする。
 
2 対象期間
 特別育成費の支弁の対象とする期間は、高等学校入学時から家庭復帰又は養護施設、里親等への措置変更が行われるまでのおおむね6ヶ月程度とする。
 
3 実施方法
(1)年長児童の処遇計画
 ア 教護院長は、中学3年時の遅くとも2学期中に、関係中学校の協力を得て卒業後の進路指導を行うとともに、指導相談所長と協議し、進学、就職、家庭復帰又は養護施設、里親等への措置変更に向けての処遇計画を定めるものとする。 
 イ 前項の協議を受けた児童相談所長は、各児童の進学、就職、家庭復帰又は養護施設、里親等への措置変更を円滑に進めるための指導に積極的に取り組みものとする。
 ウ 教護院長は、児童が高等学校進学を希望する場合には、それに対応する指導体制をとるとともに、高等学校進学について、関係中学校の理解と協力を得るよう努めるものとする。
 
(2)高等学校進学児童への対応
 ア 教護院長は、教護院から高等学校に通うこととなった児童に関して、速やかに児童相談所長と協議し、高等学校進学時からおおむね6ヶ月間の処遇計画を定めるものとする。
 イ 児童相談所長及び教護院長は、児童が高校生活に円滑に対応できるよう指導の強化を図るとともに、家庭復帰又は養護施設、里親等への措置変更が可能となるよう努めること。
 ウ 教護院長は、児童が高等学校へ進学し6ヶ月が経過した時点で、当該児童を取り巻く状況等が未だ改善されず、引き続き教護院に在所させ、高等学校に通わせることが必要と認められる場合には、措置の継続についてその後のおおむね6ヶ月間の処遇計画を添えて児童相談所長に協議を行うものとする。
 
4 実施に当たっての留意事項
(1)従来から教護院においては、情緒の安定や基本的生活習慣の確立を目指した生活指導、学力の遅れを取り戻し増進させるための学科指導及び職業への興味関心を助長する職業指導が重点的に行われてきたが、さらに高等学校進学に対する意欲を増進させる指導を充実させる必要があること。
(2)教護院長は、高等学校通学児童と他の入所児童との生活形態が異なることについて、その処遇に充分配慮すること。
(3)児童相談所長及び教護院長は児童の高等学校進学に際し、児童の福祉を損なうことのないよう慎重な配慮を行うとともに、関係者への理解を求めるよう努めること。
 
5 その他
(1)教護院長は、義務教育期間中に退所が可能な児童については、関係中学校の理解と協力を得て、その復学に支障のないよう努めること。
(2)教護院長は、学齢を超過した児童については、3の(2)と同様の処遇計画を定め、また、児童の状況に応じて積極的に外部の事業所等に委託して職業指導を行うなど、社会的自立に向けての指導の充実に努めること。
(3)教護院長は、教護院を退所した児童についてのアフターケアについて特段の配慮をすること。
 
6 適用期日等
 この取扱いは平成元年4月1日から適用するものとし、その際、現に高等学校に在学している児童についても対象として差し支えないが、処遇計画の策定等については3の実施方法に準じて行うものとする。
 
注)なお、この文書は、元初中第49号 平成元年4月27日 文部省初等中等教育局中学校課長 辻村哲夫 より 各都道府県指定都市教育委員会 指導事務主管課長宛 「教護院入所児童の高等学校進学の取扱いについて(通知)」としても通達されております。
 
<事前協議確認事項(全国教護院協議会と厚生省)>

@ 自弁対象期間は「おおむね6ヶ月程度とされているが、今後の実施状況をみて延長の方向で検討されたい。
 → 当初案3実施方法F(上記案3の(2)のウ)で児童相談所長との協議が整えば、支弁の継続を認めているので「6ヶ月」を変えることは考えていない。

A 各種学校に入学した児童も養護施設並に対象となるのか。また、全寮制の高校に進学した場合も認められるのか。
 → 対象となる。職業訓練校に入学した場合には、養護施設、教護院ともに特別育成費の対象ではなく「職業補導費」として交通費が支弁されている。

B 定時制や通信制の高等学校、あるいは修学期間が1年程度の各種学校については期間の特例が認められないか。
 → 特例を認める考えはない。ケースによって児童相談所長と協議してもらいたい。

C 当初3実施方法F(上記案3の(2)のウ)について児童相談所長と特別育成費の支弁を継続することに協議が整えば、期間延長が「自動的」に認められるのか。また、両者の協議が分かれたときが問題で、教護院長が延長を必要と考えている場合には認められる余地があるか。
 → 両者の協議が整えば期間延長はそのまま認められる。厚生省の承認を求める必要はない。また、当初に見解が異なっている場合には教護院長は児童相談所長を説得して了解を得るようにしなければならない。

D 定時制や通信制高校に進学する児童などでケースによっては6ヶ月をこえる処遇計画又は指導計画を策定してもよいか。
 → 6ヶ月の計画を策定されたい。問題点があれば備考欄などにその旨付記されたい。

E 教護院から通学できる高校に進学したが、家庭復帰すると通学困難となる場合には転校等の処置が必要となる。それが実現するまで延長が認められるか。
 → 養護施設への措置替えや里親委託をまず考え、次に転校を検討することになるが、いずれにしても退院のメドがつくまでは認めざるをえない。

F 当初案の5の(1)および(2)(上記案も同じ)はこの通知に入れる必要はないのではないか。
 → この通知を対象とする児童以外のものについても、十分目を向けてもらいたいと考えてこの文言を加えた。字句の表現については検討する。