児童自立支援施設に入所中の児童に対する学校教育の実施等について |
10初中第三九号
平成一〇年三月三一日
都道府県・指定都市教育委員会義務教育主管課長あて
文部省初等中等教育局中学校課長教育助成局財務課長通知
児童自立支援施設に入所中の児童に対する学校教育の実施等について
児童福祉法の一部を改正する法律(平成九年法律第七四号 以下「改正法」という。)が平成一〇年四月一日から施行されることに伴い、厚生省児童家庭局長から都道府県知事等あてに別添のとおり通知されました。
ついては、貴教育委員会におかれては、この通知の趣旨について、左記事項に留意の上、管下の市町村教育委員会及び学校に周知願います。
記
一 児童自立支援施設(以下「施設」という。)に入所中の児童に対する学校教育の実施形態は関係教育委員会において判断されるものであること。また、学校教育の実施の際には、関係教育委員会は、福祉部局等と十分に連携を図ること。
二 施設の入所又は通所の対象となるのは、「不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」(改正法第四四条)であり、登校拒否又は高等学校の中退は理由となるものではないこと。
(別添)
児発第九五号
平成一〇年二月二四日
/都道府県知事/各指定都市市長/中核市市長/ 殿
厚生省児童家庭局長
児童養護施設等における児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に係わる留意点について
児童福祉法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)、児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令及び児童福祉法施行令等の一部を改正する政令は、それぞれ平成九年六月一一日法律第七四号、平成九年九月二五日政令第二九一号、平成一〇年二月一八日政令第二四号をもって公布されたところである。
これらの改正の趣旨及び内容については、平成九年九月二五日児発第五九六号本職通知「児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令等の施行について」等においてすでに一部通知したところであるが、児童養護施設等の児童福祉施設に関し、改正法の施行に伴い留意すべきその他の事項は左記のとおりであるので、御了知の上、管下の市町村、関係機関、関係団体等に対して周知徹底を図るとともに、適切な指導を行い、その運用に遺憾なきを期されたい。
なお、本通知については文部省及び労働省と協議済みであり、また、本通知が発出されることについては、文部省を通じて各教育委員会へ、最高裁判所事務総局家庭局をつうじて各家庭裁判所へ、それぞれ連絡を依頼してあるので申し添える。
記
第一 児童養護施設等の運営について
(中略)
(五) 児童自立支援施設
改正法により、教護院について、その目的を、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援することとし、名称も児童自立支援施設に改めることとしたところであるが、自立の支援とは、施設内において入所者の自立に向けた指導を行うことの他、入所者の家庭環境の調整や退所後も必要に応じて助言等を行うこと等を通じ、入所者の社会的自立を支援すること等をいうものであり、施設においては、こうした入所者の自立の支援のための活動に積極的に取り組むべきものであること。また、特に、以下の点に留意願いたいこと。
ア 入所対象
改正法により、児童自立支援施設の入所対象に、新たに家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を加えたところであるが、これは、家庭における保護者の長期にわたる養育怠慢・放棄など家庭環境等に問題があり、この結果、日常生活における基本的な生活習慣の習得がなされていないこと等により、施設において児童の自立支援のために生活指導等を要する児童を対象とするものであり、具体的には、
@ 親が長期にわたり育児を放棄した結果、日常生活を営む上で最小限必要な生活習慣等が身についておらず、将来に対する自立意欲を欠いており、社会に適応するために施設への入所、通所、退所後の対応等の支援が必要な児童
A 義務教育を終了した後、就職したが、家庭環境に起因する学力不足や、対人関係の形成等の問題があり、仕事も長続きせず、改めて学習指導を含めた生活指導等を必要としている児童
のような例が想定されるものであって、家庭を通じ対応が可能な場合や生活習慣等の乱れが一時的な場合は対象にならないこと。また、いわゆる不登校児又は登校拒否児若しくは高校中退者について、学校に行っていないこと又は高校を中退したことを理由として入所の対象とはならないものであり、これらの点について、児童及びその保護者、児童相談所、児童自立支援施設等の関係者に誤解を生じることのないよう、特に留意し、周知徹底を図られたいこと。
新たな入所対象児童に対する処遇内容については、基本的には、従来の対象児童に対する処遇内容と同様であり、そうした処遇内容が児童の最前の利益を確保する上で適当と考えられる児童が入所の対象となるものであること。
イ 通所措置
改正法により導入された通所措置については、施設に入所させ保護者等と児童を分離するよりも、家庭における保護者等との生活を基本としつつ通所により生活指導とその家庭環境の調整等を行うことが適切と考えられる児童が対象となるものであり、具体的には当初から通所措置が適当である児童とともに、施設措置の解除の前段階として通所措置により実社会における自立を図ることが適当である児童が対象として考えられるものであること。また、児童の自立支援の観点から、通所措置の実施について積極的な対応が望まれるが、具体的な実施の時期については、地域の実情等に応じて、個別に判断されたいこと。
なお、少年法(昭和二三年法律第一六八号)に基づく保護処分の決定を受けた児童については、改正後の児童福祉法(昭和二二年第一六四号。以下、「法」という。)第二七条の二に規定するように、通所措置の対象とならないので留意されたいこと。
ウ 学校教育の実施
改正法により、児童自立支援施設の長に対し、新たに入所中の児童を就学させる義務が課されるとともに、施設内における学校教育に準ずる学科指導の実施に関する規定が削除されたが、この施行に際しては特に次の事項に留意されたいこと。
@ 各都道府県及び指定都市(以下「都道府県」という。)においては、関係機関の理解と協力を得て、教育委員会により学校教育が早期に実施されるよう、特段の配慮を願いたいこと。なお、法改正においては、当分の間児童自立支援施設の長が学校教育に準ずる学科指導を実施することができるとしているが、これは、学校教育の実施には地域の実状に応じた関係機関の理解と協力が必要であり、ただちに実施することが困難な場合があること等を勘案して設けたあくまで経過的な措置であることに十分留意されたいこと。
A 学校教育を実施する方法については、関係教育委員会において判断されるものであり、地域の小中学校への通学や、児童自立支援施設内における分校、分教室の設置等の方法が考えられるが、児童自立支援施設内に分校、分教室を設置する場合には、施設内の使用許可を行うなど当該分校等の設置について積極的に協力し、又は施設の設置者に対しその旨要請されたいこと。
B 学校教育の実施の際には、児童の通学する学校に対し、予め児童自立支援施設における当該児童の状況等に関し十分な説明を行うとともに、継続的に密接な連携を取り、その理解と協力を得ながら一体的かつ総合的な指導を図っていくことが重要であること。
(以下略)
【文部科学省ホームページ 告示・通達コーナーより】