「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」報告書のとりまとめ
 
平成18年3月6日
厚生労働省雇用均等・児童家庭局 家庭福祉課
 
「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」報告書のとりまとめについて(抜粋)
 
はじめに
 近年、家庭や地域における養育機能の低下など子どもを取り巻く環境は大きく変化し、児童虐待の増加、学校現場における学級崩壊、いじめ、不登校・ひきこもりといった問題、重大な少年事件の発生など、子どもの問題が一層深刻化しており、社会的支援を必要とする子どもの範囲が拡大し、かつ複雑多様化する傾向にある。
 このような子どもの問題、特に少年非行問題に対応する児童福祉施設の一つとして児童自立支援施設は、平成9年の児童福祉法の改正により、「教護院」から「児童自立支援施設」に名称を改めるとともに、対象となる子どもを拡大し、「家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」を新たに加え、その機能面においては、入所している子どもを教育・保護(教護)するだけでなく、通所機能や家庭環境の調整機能などを充実し、自立支援をさらに強化するものとした。
 また、平成15年の児童福祉法の改正における「地域支援の努力義務化」、さらには「社会的養護のあり方に関する専門委員会」の報告書などを踏まえ、平成16年には児童福祉法の改正による「アフターケアの義務化」、それに伴って行われた最低基準改正による「自立支援計画策定の義務化」など、制度面からの施設機能の強化が図られたところである。
 改正後の児童自立支援施設の状況をみると、入所している子どもの長期的減少傾向が続く中、一方では、虐待を受けた経験や発達障害等を有する子どもの割合が増加する傾向にあり、また、寮舎の運営形態においては多数を占めていた伝統的な小舎夫婦制が減少し、交替制へシフトする施設が増えるなど、施設の様相が大きく変化しつつある。
 (中略)
 本研究会は、このような認識の下に、児童自立支援施設の機能の充実・強化のあり方を検討して、その課題解決に向けた取り組むべき方向性や将来的な構想などを打ち出し、児童自立支援施設機能の充実・強化を図ることを念頭に置きつつ、児童福祉分野における少年非行対策の充実・強化を図るために設置されたものであり、幅広い専門的見地から8回に亘り協議を重ねてきた。
 本報告書は、本研究会における議論を踏まえ、これからの児童自立支援施設のあり方について、当面早急に取り組むべき課題を中心に、取組の方向性を可能な限り具体的に整理したものである。
 
1.児童自立支援施設における自立支援についての基本的な考え方
 (略)
2.自立支援機能の充実・強化
(1)支援技術・方法について  
 (略)
(2)学校教育について    
 ・平成9年の児童福祉法の改正において、学校教育の実施が義務付けられたが、導入状況は58施設中31施設と約半数の実施に止まっている。入所している子どもの自立支援の上で教育権の保障は極めて重要であり、全施設において学校教育を実施すべく国においても積極的に促進を図る必要がある。
 ・学校教育の導入に当たっては、地方公共団体の所管部局や教育委員会、地域などの理解と協力が不可欠であり、関係機関、関係者と緊密な連携を図って取り組むことが重要である。
 ・一方、学校教育においては、入所している子どもの特性や能力及び進路などに応じた個別の学習プログラム・教育計画に基づく個別支援を充実させていくことが求められる。
 ・このためには、入所している子どもの特性や能力などに応じて適切に対応できる質の高い職員の配置とともに、発達障害等に対応できる資質を有した教員などの配置が望まれる。また、進路指導や前籍校(原籍校)復学への円滑な対応を図るためにも、連絡会を実施するなど前籍校(原籍校)との緊密な連携が不可欠である。
 ・また、児童自立支援施設における学校教育は、子どもの総合的な自立支援の取組の中で生きる力を保障することを目的として行われるものであり、生活上の支援と協働して取組まれることが重要である。このような取組を充実させていくためには、学校教育導入後のこれまでの実施状況について検証・評価を行い、学校教育のあり方について検討を重ねることが必要である。また、検討に当たっては、従前、施設が実施してきた学校教育に準じる学習指導の検証も併せて行うことが必要である。さらに、施設職員を教員として有効活用するなどの方策についても  検討を行う必要がある。 
(3)施設機能の拡充について
 (略)
 
3.施設の運営体制
 (略)
 
4.関係機関等との連携
(1)児童相談所との連携について    
 (略)
(2)学校・市町村等地域との連携について    
 ・学校教育の導入の推進や教育内容の充実を図るためには、地方公共団体の所管部局と教育委員会との連携、特に施設職員の有効活用や人事交流及び研修も含めた連携のあり方について検討することが必要である。
 ・また、出身学校との連携を深め、例えば、教育委員会等で設置しているサポートチームなどをアフターケアのための社会資源として有効に活用することも有意義であり、地域の実情に応じた連携が望まれる。
 ・最近、被虐待経験や発達障害等を有する子どもなど精神的な問題を有していると思われる入所している子どもが増えてきていることから、適切な診断を受けるためにも医療機関との連携は重要である。
 ・家庭復帰後のフォローアップ体制を構築する上でも市町村と連携することは必要であり、要保護児童対策地域協議会などを有効に活用し、特に児童相談所、学校、警察、市町村、施設間での連携を深めることが重要である。
 ・児童自立支援施設において、医療と福祉との連携、学校と福祉との連携など様々なケース検討会議を積み重ね、連携のあり方を検討し、国は、連携の参考事例等を全国へ発信していくことが必要である。
 ・また、大学や地域との繋がりを強化し、マンパワーや知識の活用を検討していく必要がある。
 
(3)児童福祉施設・少年院との連携について    
 (略)
(4)家庭裁判所・警察との連携について    
 (略)
(5)児童自立支援事業に関する広報・啓発について    
 (略)
5.児童自立支援施設の将来構想
 (略)
 
おわりに
 以上、児童自立支援施設のあり方について、概ね当面早急に取り組むべき課題や方向性を整理した。児童自立支援施設の現状を考えれば、国、地方公共団体や関係者は、子どもの健全な発達・成長のための最善の利益の確保を目指し、設備や体制の充実のために必要な予算措置を含め、まず早急に取り組むべき課題について着実に一つ一つ解決し、具体的な成果を上げることが期待される。その上で今後の取組の状況や将来構想を踏まえつつ、継続的に検討を行いながら、児童自立支援事業を推進していくことが必要である。