教護院に入院した児童生徒の取扱いについて(行政実例)
 
                    (昭60.12.19 委初18 初等中等教育局回答)

 各都道府県教育委員会教育長 殿

                             文部省初等中等教育局長    
                                   高 石 邦 男  
                             文部省教育助成局長       
                                   阿 部 充 夫  
 

教護院に入院した児童生徒の取扱いについて(通知)
 

 このたび、教護院に入院した児童生徒に対する学校教育の実施等について照会がありましたが、このことについては、下記のとおり解しておりますので、事務処理上遺漏のないようにして下さい。
 
照会

 児童福祉法の規定する教護院に入所している児童・生徒に対して学校教育をうける機会を与えることができるかについて、次の通り疑義がありますので照会します。
1 小学校または中学校の設置者が教護院側の要請に基づき、教護院の施設内に小学校又は中学校の分校又は分教室をおき、教護院に入院している児童・生徒に学校教育を受けさせることは、学校教育法上差し支えないと解するかどうか。

2 昭和29年3月26日付け委初第23号滋賀県教育委員会教育長あて文部省初等中等局長回答「教護院における児童生徒の学籍取り扱いについて」は、児童生徒が教護院に入院した場合の就 学事務取り扱いについては、就学義務の猶予又は免除を受ける場合と解するべきであるとしてい るが、これは、教護院に入院している児童・生徒が学校教育を受けていない場合には就学義務の猶予又は免除を行なうべきことをしめしたものであり、1の場合には、当該児童・生徒に対して就学義務の猶予又は免除を行なう必要はないものと解してよいか。

3 1の場合には、当該分校又は分教室については、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に基づき教職員定数を算定し、また義務教育費国庫負担法に基づき教職員給与費等の国庫負担がなされるものと解してよいか。

 
回答

1 差し支えないものと解する。
 なお、教護院の施設内に小学校又は中学校の分校又は分教室を置くに当たっては、教護活動との関連に留意して慎重に検討し、学校の設置者が教護院及び都道府県教育委員会と十分協議した上で行うこと。

2 及び3お見込みのとおり。
 
 

教護院の施設内における学校教育の実施について
 
1.昭和29年の行政実例(昭和29年3月26日付け委初第23号滋賀県教育長あて文部省初等中等教育局長回答「教護院にある児童生徒の学籍取り扱いについて」)は、当時は教護院の施設内で学校教育が行われていなかったことから、児童生徒が教護院に入院の措置を受けた場合には、端的に、就学義務の猶予又は免除を行うべきことを指導したものである。


 なお、教護院に入院した児童生徒について、就学義務の猶予又は免除を行うかどうかは、市町村教育委員会が保護者の申し出により決定するものであるが、それは、単に教護院に入院したかどうかによって判断されるべきものではなく、当該児童生徒に学校教育を受ける機会が与えられているか否かによって判断されるべきものであることはいうまでもない。

2.その後、昭和30年代の後半頃から、少年非行の激増、教護院を出た者のその後の実態、教護院に入院した児童生徒及びその保護者からの要請等を背景に、一部の都道府県において、教護院に入院した児童生徒に対して正規の学校教育を受けさせようとの動きが出てきた。
そして、昭和40年代に入り、教護院の設置者である都道府県の民生部局等からの要請を受けた市町村教育委員会は都道府県教育委員会と協議し、教護院内に小学校又は中学校の分校又は特殊学級を設け、教護院に入院中の児童生徒に対して学校教育を受けさせることが一部で行われるようになった。
 そして、昭和60年5月1日現在、7県の8教護院に、小・中学校合わせて40学級が開設(派遣教員数は52人)されている。

3.教護院の施設内において、児童生徒に対し教護を行いながら学校教育を受けさせることは、現行法令上可能であり、また、教護院に設置された分校又は特殊学級は、教護院の設置者からの要請を受けた市町村教育委員会が、都道府県教育委員会と協議し、学級編制についての認可を受けて設置しているものであることから、文部省としては、そこで実施される教育は学校教育であると考えており、また、そのために配置される教員については、これまで「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」及び「義務教育費国庫負担法」を適用してきたところである。

4.なお、教護院の施設内で児童生徒に学校教育を実施するかどうかは、前記のとおり、市町村教育委員会が、それぞれの具体的な実情等を踏まえて、教護院の設置者及び都道府県教育委員会と協議し、決定すべきことがらであるから、文部省としては、これまでこのことに関し、文書による指導は行っていない。

5.また、学校基本調査の手引の中の児童生徒数の説明において、「教護院に送られている者は在籍者とはしない」とされているが、これは教護院に入院中であっても、教護院内で児童生徒が学校教育を受けている場合には、前述(1のなお書参照)したとおり、就学義務は猶予又は免除を行うべきではなく、当該学校の在籍者として取扱うのは当然のことであるとの考えから、これまで、格別の説明を行っていない。

6.なお、教護院内で学校教育を行うことになれば、入院中の児童生徒に対して教護と学校教育とが行われ、結果としては、いわば手厚い行政が行われることになるが、両者は目的を異にするものであり、それぞれの機能が適正に行われている限り、国費のダブリないしは二重取りというようなことにはならないものである。

7.文部省としては、上記のような理解に立ってこの問題を処理してきたが、これまでの行政実例及び学校基本調査の手引の説明について、その趣旨が関係者に必ずしも正確に把握されているとは言い難い面もあるので、この際、@教護院の設置者と学校の設置者とが、合意の下に、教護院内に分校等を設け、入院中の児童生徒に対し学校教育を行うことができること、Aその際は、当該児童生徒に係る就学義務の猶予又は免除を行う必要はなく、当該学校の在籍者として取り扱うことなどについて、文書による指導を行うものとする。
 また、学校基本調査の手引の説明についても、これと同様の趣旨を明記するものとする。