教護院の教育問題についての経過
1.会計検査院の問題提起
(1)会計検査院(文部担当)は、昭和60年度の検査で教護院に併設している「分校分級での教育は”準ずる教育”と重複している。」と文部省に対し問題を提起した。
(2)会計検査院と文部省との折衝の過程で、10月下旬「この案件は問題にしない。ただし、取扱い方法を明確にして全県に徹底すべきだ。」と条件付きで不問とした。
2.文部省の対応
(1)文部省は、会計検査院に対し「教護院内で学校教育を行うことは、入所児童に対して手厚い行政が行われることになり、それぞれの機能が適正に行われる限り二重取りはない。」と主張。
(2)昭和29年の行政実例(教護院入所児童に係る教育義務の猶予免除の措置)は、当時教護院内で学校教育がおこなわれていなかったことからの指導であって、その後の状況の変化(分校分級化)によって、その取扱いも異なってきているとした。
(3)従って、今回問題となっている、分校分級方式によって教育を受けている児童は、就学義務の猶予又は免除をすべきではないとしている。
(4)従来からの話し合いからみて文部省の基本的姿勢はおおむね次のとおりである
ア 教護院で「準ずる教育」が行われているので、29年の行政実例は変える考えは全くない。
イ 教護院に入所措置された場合には在籍しない者として扱う。従って卒業証書は発行できない。しかし、現地での現実的処理が行われていることは承知している。
ウ 教護院は学校教育法にいう学校ではないので、教育の委託は考えられない。
(5)以上の問題点等を踏まえ文部省は初等中等教育局長名で各県の教育委員会あて次の内容の通知を出した
ア 分校分級方式は学校教育法上差し支えない。設置する際は教護活動との関連に留意し慎重に検討し、関係者間で十分協議せよ。
イ 29年の行政実例の取扱いにおいて、分校分級方式の場合は、就学義務の猶予免除は必要としない。
ウ 分校分級方式は教職員給与等の国庫負担の対象となる。