平成6年に「児童の権利に関する条約」が批准されたことを契機として、施設児童の学習権保障への関心が高まり、ついに平成9年の児童福祉法の改正となった。同法第48条では、これまで学校教育が義務化されていなかった情緒障害児短期治療施設及び児童自立支援施設も義務化されることとなった。
ここで注目すべき点が3点ある。
1 施設長が法に規定する保護者に準じて就学義務を負うこと (義務教育の義務は子どもにあるのでなく保護者に負わされている)
2 附則第七条で「当分の間・・・」として学科指導の継続を認めていること
3 学校教育法で、通学すべき学校が指定されていないこと
要するに、学校教育の導入は義務化されたものの、法体系としては極めて不備になっている。これは、一部の施設に学科指導の継続を望む声があり、厚生省としてもそれを無視できず、結果として文部省との折衝にも踏み切れずに終わったからである。 また、法改正に伴い平成10年3月に文部省および厚生省から各都道府県教委と福祉部局長あてに通達が出されている。(10初中第39号 平成10年3月31日 都道府県・指定都市教育委員会義務教育主管課長あて 文部省初等中等教育局中学校課長教育助成局財務課長 「児童自立支援施設に入所中の児童に対する学校教育の実施等について」)
ここで指摘されていることはおよそ次の4点である。 1 児童自立支援施設への学校教育の導入を早期に実現する 2 実施形態は関係教育委員会の判断に委ねる
3 関係教育委員会と福祉部局との連携が必要
4 地元学校と施設が協力して一体的かつ総合的な指導に努める
ここから読みとれることは、都道府県及び市町村の教育委員会と福祉部局が学校教育導入に関わらなければならないが、学校の実施形態は指定していないので、市町村立の分校や分教室で実施せよというものである。 この通達は教育助成局財務課長との連名でもあるが、財政面に具体的に触れていないのは残念である。「実施の際には・・福祉部局との十分な連携」の文言の中に、暗に財政面での協力関係が示されているとも言える。そもそも都道府県や政令指定都市が設立する施設内に、市町村立の分校や分教室が設置されるのであるから、異なる地方公共団体が関与することになり、すんなりとは行かない性格のものである。特に経費や管理責任は利害関係を伴うものであり、双方の譲歩なくしては妥協点を見いだせなくなってしまうという難題を抱えている。
平成10年以後に学校教育を導入した施設は以下のようになっている。
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