全国の児童自立支援施設と地元の養護施設の学校教育に関する経費を大まかに比較すると、大きな違いが見られる。
児童は児童相談所を通じて同じように措置されているにもかかわらず、このように経費負担が異なるのは、学校が施設内にあるかないかの違いによっている。
養護施設の児童は生活習慣上の問題がないため、一般の小中学校に通学している。通学する小中学校では、養護施設の児童分だけ人数が増えるが、机・椅子などの備品を増やすだけである。学校基本調査には児童分の人数が上乗せされ、学校予算も上乗せされた児童生徒分で組まれる。他の一般児童生徒と何ら変わりなく扱われている。
ところが、児童自立支援施設の児童は施設内に分校や分教室が設置されているため、さらに多くの経費が必要となる。校舎・教室・職員室・備品・印刷器具などが新たに必要である。これらの経費の一部は、施設側の学科指導用設備や備品を当てることができるが、不十分な点は補う必要があり、また、維持経費が新たに発生してくる。市町村にとっては余分な支出となる。このことは、学校教育の導入を市町村が渋る原因の一つとなっている。
こうした新たな経費をどのようにして捻出するかが問題となるが、義務教育費国庫負担制度はこれに十分に応える仕組みとなっている。それは、地方交付税交付金での市町村への補助という形で行われている。児童生徒数の増加に対しては児童生徒数と学級数に見合った交付金の増額があり、分校の新設に対しては学校数の増加に見合った増額がある。(普通交付税に関する省令第5条十三、十五、十七、十九)この増額分を具体的にいえば、分校1校当たり年間約900万円にもなる。もっとも、分教室は一つの学校と見なされないため、学校分の増額はない。市町村の経費負担を考慮すると、分校化は是非とも必要となってくる。
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では、学校に関する経費は全額市町村が負担してくれるかというとそうはいかない。その原因は地方交付税交付金の性格に関係する。地方交付税交付金の使途は地方公共団体に裁量権があるため、交付金の単位費用を下回った予算を組むこともできる。もし、市町村が不交付団体ならば、経費を捻出してもらうのはさらに難しい事となる。たとえ学校教育の導入が果たせても、どれだけの予算確保ができるかは、施設設置者と市町村の協議次第ということになる。法律が変わったからといっても、経費確保は難しい課題である。
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このように、施設内の分校では市町村は施設設置者への負担も求めるのが通例となっている。全国のほとんどの児童自立支援施設では、おおまかに分けて、管理に関する経費は施設側の負担、授業に関する経費は市町村側の負担と割り振った所で落ち着いているようである。
では、学校教育に関する経費は具体的にどのような項目があるのか。平成18年8月に本分教室が全国の分校・分教室に調査した項目は以下の通りである。
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