義務教育は無償と言われるが、それは次の法令で規定されている。
日本国憲法第26条「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。2すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」
教育基本法第5条「3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。 4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。」
学校教育法第6条「学校においては、授業料を徴収することができる。ただし、国立又は公立の小学校及び中学校、これらに準ずる特別支援学校又は中等教育学校の前期課程における義務教育については、これを徴収することができない。」
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国が義務教育を無償とすることは義務教育費国庫負担制度と言われ、具体的には財政面で次のようなしくみとなっている。
@ 市町村が行う学校建設経費の2分の1を国が負担
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義務教育諸学校施設費国庫負担法 】
A 教員給与および報酬等の3分の1を国、3分の2を都道府県が負担
【
義務教育費国庫負担法 】
B 教科書は国が無償で給付および給与、転学先で異なる教科書の給与
【
義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律・施行規則 】
C 地方交付税法で単位費用を定め、不足額を交付
【
地方交付税法 普通交付税に関する省令 】
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このうち教科書はもともと「授業料」に含まれず無償対象ではなかったが、ご存じのように、京都市から広がった教科書無償の運動(部落解放の歴史参照)により、現在は授業料の一部と認められている。
また、現在の義務教育費国庫負担法では教員の給与等しか定めがないが、かつては教材費や旅費もこの法律の対象となっていた。しかし、下記のように昭和60年度より地方交付税により一般財源化されることとなった。
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このように、義務教育の無償制度は時代の流れとともに変化してきているが、義務教育費国庫負担法第1条は、無償制度の根本的な意義を示しており再確認したいものである。
「この法律は、義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」
この法律の崇高な目的は将来にわたって維持されなければならないものであるが、次第に内容が乏しくなりつつあるのが誠に残念である。これに代わって、地方分権化の促進の流れから、義務教育に関する経費も地方自治体に負担させようとされている。このような状態で、はたして国全体の教育の機会均等と水準維持が図れるかとの不安の念にかられてしまう。
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義務教育費国庫負担法による特定財源が、地方交付税による一般財源に変わることによって、実際には市町村の教育予算も大きな影響を受けている。
平成16年度に文部省が公表した地方自治体による教育費の確保状況調査によると、平成9年頃から一般財源中の教育費の措置率が100%を切りはじめ、平成15年度には全国平均で75.7%に下がったとしている。一般財源化されたことによって、地方自治体の教育に対する意識の温度差により、明らかに較差が生じ、国全体として教育にかける経費が減少しているという結果が示された。もはや、義務教育の水準維持は地域によっては崩れ去り、教育の平等性の確保もできなくなりつつある。こうした教育費の措置率の低下を懸念し、地方自治体において教材費の予算確保をするよう文部省は昭和53年に出された通達を手始めに、60年からは何年か毎にたび重ねて通達を出してきた。にもかかわらず、この減少傾向はなかなか改善されないのが現状である。
この間に市町村の教育予算は削減され続け、各学校での印刷経費・消耗品・備品・電話代が削減され、逆に保護者負担が増加することとなっている。昭和60年の通達には「保護者負担に転嫁することのないよう」という一文があるにもかかわらず、憂慮する事態が進行している。この施設の場合は、保護者は施設長であり、保護者負担は施設設置者の負担となる。都道府県の財政も逼迫する中で保護者負担分の増加は不可能であり、この厳しい状況は、入所児童の教育に大きく跳ね返ってくる。
地方分権化が促進され、地方の自主性が求められるようになってきた現在、法的に保障される財源が減り、市町村裁量の財源が増加している。施設と学校の設置者が異なるという特殊な状態にあるこの施設では、市町村の理解なしには、学校教育経費の確保は難しく、義務教育が完全に保障されるのも難しい。
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