教育概要
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メキシコの教育は、メキシコ合衆国憲法第3条で定められた連邦教育法によりとり行われている。 ( 第3条・・・教育は人間の能力と人間の形成と、同時に愛国心を調和して発育、発達させることである。また、独立と正義において国際連帯意識をもたせる教育を実施すること)メキシコの教育を統括する組織として、連邦教育省(SEP)がある。SEPから出されるカリキュラムに基づいて各レベルでの教育が行われている。 |
(1) 教育制度
(2000年現在)
メキシコの教育制度は図1に示す通りである。幼稚園・小学校を基礎教育、中学校・高等学校等を中等教育、大学等を高等教育としている。
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就学前教育は2年制で4才から開始するが義務教育ではない。
初等教育は6年制で6才からである。中学校は3年制で12才からである。小学校は以前から義務教育であったが、中学校は、1993年になって義務教育とされた。義務教育であっても、小学校から進級考査があり、留年する児童もある。約5%が小学校を卒業できず、約10%が中学校を卒業できない。このように年齢と学齢 が必ずしも一致しないことが多い。初等職業訓練学校は、小学校を卒業した15才以上のものを対象とした訓練機関となっている。
高等学校は3〜4年制で15才からである。中学校や高等学校にはテレビ(主としてビデオ)学校があるのが特徴である。これは1968年より開始されたもので、日本のNHKも手本にしたといわれる。表1に示すように、国の広さを考えるとテレビ学校の比率(特に学校数)は非常に高いものであることがわかる。
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表1
2000〜2001年データー
(SEPホームページより)
* はデーター不掲載のため1900年のもの
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表2
メキシコにおける祝日
・ 9/16 独立記念日
・11/ 2 死者の日
・12/ 1 新政権執行日(6年ごと)
・ 3/21 ベニート ファーレス生誕日
・ 5/ 1 メーデー ・ 5/ 5 対仏戦勝記念日 ・ 5/15 先生の日(先生が祝福を受ける) |
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メキシコでは技術教育に重点が置かれ、職業人を育成するための職業教育・訓練が各レベルで設けられている。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) 教育計画
教育年度は、ほぼ9月に始まり7月に終了する。本年度は、第1期が8/21〜12/20。クリスマス休業の後、第2期が1/7〜4/7。復活祭休業の後、第3期が4/22〜7/6となっている。土日は完全休業日で、他に表2のような祝日があり、年間授業日数は約200日である。
教育施設が十分でないため、各レベルの教育は、午前・午後・夜間などの部制をとっている。したがって、授業以外の特別活動・課外活動はほとんど見られない。
メキシコ憲法第15・18条では、国の記念日での国旗掲揚が義務づけられており、学校教育においても併せて年間40回行われる儀式が大きな行事となっている。
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(3) 教育内容 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
@ 初等教育(小学校)
1日の授業時間は4時間で、年間800時間である。午前の部(8:00〜12:30)、午後の部(13:00〜17:30)、夜間の部(18:00〜22:00)のうち2〜3部制をとっている。1・2年生では統合教科が、3年生以降は教科別指導が中心である。全学年を通じて、スペイン語の読み書きと口語表現が重視されている。特別教室を持つ学校は少なく、学習はほとんど教室で行われ、児童の移動は少ない。下の表3・4に授業内容例を示す。
初等教育1・2年生の授業内容(週あたりの時数)
表3
初等教育3〜6年生の授業内容(週あたり時数) 表4
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A 中学校教育
1日の授業時数は7時間で、3時間連続授業→休憩・間食→4時間連続授業などとなっている。午前の部(7:00〜13:10)、午後の部(14:00〜20:10)の2部制が多い。中学校には図1のように、普通中学校・技術中学校・テレビ中学校の3種類がある。技術中学校には、工業商業・農牧畜・林業・水産などの種類があり、進学と就職の両面を持った二価教育システムで行われている。テレビ中学校は僻地住民の教育のために設立されたもので、12才から19才までの入学を認めている。
普通中学校の授業内容(週あたり時数) 表5
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B 高等学校等
後期中等教育は、上級学校への進学準備のためのもの(普通教育系と職業教育系)と、職業訓練をおこなうもの(職業訓練コース)に分かれる。前者における留年率と中退率を併せると50%近くになり、修了率は約60%程度と卒業するのがたいへんである。修了者の中で3分の2近くが大学等の高等教育に進んでいる。教員は、ほとんどが複数の学校を兼務しており、常勤の教員は校長をはじめ極わずかである。
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(4) その他の特徴
メキシコでは「学校は学習の場である」という考え方が一貫している。授業が終われば児童生徒は下校し、教員も帰宅する。教員は他の仕事への就業も認められている。学校以外の場では、小学生から家事や家業の手伝い、アルバイトなどの勤労体験をする者も多く、また塾通い、スポーツクラブでの活動など多様な生活を送っている。
学校と保護者との関係は我が国以上に密接である。学校設置者は校舎の設置と教員の給与は負担してくれるが、施設・設備・教具などは保護者の負担に頼っている。保護者の経済力の差によって、学校教育に差が生じているという現実がある。
しかし、1994年に教育近代化計画が発表され、カリキュラム・教育設備(コンピューター機器を含む)・指導技法の見直しが進められている。体験学習・ディベート能力の育成を重視した授業改善が進むなど、新しい展望への一端が諸処に感じられた。
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