メキシコでの生活のようす
○料理 
   メキシコ料理の主食は、トウモロコシの粉に石灰と水を混ぜ焼いた「トルティージャ」である。トルティージャには、柔らかい物と油で揚げた物堅い物がある。レストランに行くと まず、堅いトルティージャ・小さなパン・ビスケットの3つが、バスケットに入って出されてくる。そして、赤トオガラシ・青トオガラシの濃厚なスープが出される。注文した料理が できるまでは、トルティージャにスープを乗せて食べるわけだが、トオガラシがとにかく辛い。口の中がしびれたところで料理を頂くことになる。  出てきた料理もほぼ赤色をしている。ドオガラシをたっぷり入れるのは訳があるのだろうが、何をたのんでもほぼ同じ味である。イカ・エビの料理は少し日本の味に近い物があったが、砂っぽい味が気になった。日本のだしが恋しくなり時々インスタントみそ汁をすすった。
 これらの料理は辛いのを我慢すれば食べれるが、そのあとがたいへんである。胃腸の働きが活発になり、トイレに行く回数がぐっとふえる。1日に5回トイレに行った日もあった。
 ミルクとフルーツはとにかくおいしい。ミルクは日本の「飲むヨーグルト」のような舌ざわりで濃厚である。しかし、スーパーで1リットル入りのミルクを見ると、賞味期限が2ヶ月ほどになっている。そのまま飲んだ人が、ひどい下痢に苦しんでしまった。フルーツは、 アボガド・パパイヤ・マンゴー・スイカ・オレンジが年中あり、実に安くおいしい。
 ビール(セルベッサ)は、全体にうすく、MODELOが最も日本のビールの味に近かった。注文すると500ミリリットルのビンがきて、グラスはない。みんなラッパ飲みである。テキーラは強烈であるがたいへんおいしい。代表的なカクテルであるマルガリータは、グラスのまわりに岩塩が塗ってあり、レモンをかじりながら頂く実にさわやかで美味な物である。
 滞在中は、結局お腹の調子と相談しながら、パン・ジュース・ハンバーガー・スパゲッティーが中心となってしまった。
○テレビ
   テレビのチャンネルは実に多く、ベラクルスのホテルでも20チャンネルほどあった。英語の放送が1チャンネンルで、これはUSAの放送が入っている。あとは全部スペイン語の 放送である。しかし、メキシコの国内の放送は5チャンネルほどで、あとはスペインの放送 や中南米各国の放送が入っている。中南米はほとんどスペイン語なので、どの国に行っても 言葉は困らない。どの国の放送も見られるのは、すごいと思うのは日本人だけか。
 サッカーはとにかく盛んである。そのためサッカー中継は毎日やっている。メキシコリーグだけでなく、イタリアリーグ(中田も登場)、スペインリーグ、南米各国のリーグなどどのチャンネルを見ようか迷ってしまう。
 闘牛は日曜日にしか行われないので、日曜日のテレビを楽しみにしていた。途中から見たが、それでも約30分間牛を何度も動かして、そして最後に剣で牛の背中に全部つきさした。3分ほど後、牛はどっかりと倒れ足をぴくぴくさせていた。闘牛士の英雄ぶりを讃えるインタビューがあったが、複雑な気持ちになった。
国民性のちがいを最も感じた瞬間だった。
 プロレスも有名と聞いていたが、町中でもテレビでもそのような話は聞かなかった。
○貨幣と両替
   出発前に滋賀銀行でドルに両替し、旅行会社でT/C(トラベラーズ・チェエク ドルだて)を作ってもらい、関西空港でまたまた日本円をドルに替えていった。メキシコでは、全く円の交換はできない。さらに、カード(VISA)も新しく作った。JCBカードを持っ  ていたが、メキシコでは通用しないらしい。
 滞在中の1ドルは約108円。1ペソが13円である。この換金率がややこしい。1ドルが9.3ペソで両替というのが分かるのに、ずいぶん時間がかかった。しかし、1ペソはほぼ日本の10円なので、慣れると楽であった。
 メキシコシティーに行くと、食べるのも、何を買うのもほとんどペソしか受け付けてくれない。ホテルで両替するのは、朝10時以降でないとだめだし、上限がある。午後にはホテルの金がなく両替できない。ペソがないと、ミネラルヲーターも買えないからのどが渇いてしまうし、枕銭も用意できない。とにかく、ペソの残りを計算しながらの毎日であった。
 メキシコシティーでは、ホテルのまわりにも両替屋があったが、換金率が悪くほとんど利用しなかった。ベラクルスでは市内の両替屋に行って、多額の換金をしてもらおうとした。 T/Cとパスポートを提示するのだが、他の人はすんなりいっても、私はなかなか両替してもらえない。15分ほどかかってやっと両替してもらった。あとで聞くと、メキシコのオアハカ州の人に似ているので、本当に日本人かどうか疑われたらしい。そう言えば、メキシコの人に何度も道を聞かれたことがあった。やっぱり先祖の血は同じなのか。
○人々の暮らし 
   出発前からガイドブック等で、メキシコの治安が悪いことは聞いていた。夜は複数でも出歩かない。流しのタクシーには乗らない。空港やバスターミナルでは荷物に気を付ける。釣銭はしっかり確認する。などである。現地に行ってみると、ほとんど貸切の観光バスでの移動であったので安全であり、そんな被害には出会わなかった。ベラクルスは、夜に一人で出歩いても、ラフな格好であれば目立たず、多額の金を見せなかったら安全であった。
 メキシコシティーでは、到着した翌日にソカロ付近で暴動がおこったそうだ。その次の日にソカロの見学に行くと自動小銃を持った兵士が町の至る所に待機していた。銃口がこちらを向いていると、まちがって打たれないかと思わずゾッとした。初めての経験であった。
 交通ルールは日本と大きく違う。車が右側通行もそうだが、車優先である。人が横断中でも、車はスピードを緩めずにつっこんでくる。横断歩道はあってないようなものだ。
 とにかく物売りが多い。土産物・新聞・パン・おもちゃ・ベルトなど至る所で売っている。 小さな子どももたくさん売っている。言い値では買えない。半分近くに値切っても大丈夫である。売るのもしつこい。レストランで食事をしていても、席まで売りに来る。
 貧しい人も多く、乞食をしている人が多い。1ヶ月の家賃が30円の家で多くの家族が 暮らし、その家賃を払えない人がたくさんいると聞いて思わずうなずいてしまった。